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88歳。有田焼人間国宝の物語〜その一〜

コラム 伝えたいこと

有田焼の重要無形文化財「白磁」保持者、井上萬二さんに会った。佐賀県有田町の井上萬二窯の応接室で、テーブルを挟んで向かい合った2時間。人間国宝は、出されたお茶にほとんど口もつけず、ノンストップでしゃべり続けた。会話の終盤には「あと2時間でも話せるよ」とニヤリ。90歳を目の前にしているとは思えない元気さに、半分の年も生きていない私は、ただ驚くしかなかった。

柿右衛門など鮮やかな絵柄で有名な有田焼で、一切の加飾を施さない白磁の世界を切り開いた萬二さん。一つの道を極めた男と共有したひと時は、私の人生の中でも貴重な時間の一つとなった。

人間国宝のストーリーを、萬二さんの語り口調で起こしてみた。みなさんが充実した老後を送るためのヒントになれば、幸いである。

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陶芸家 井上萬二さん

88歳になりましたけど、まだまだ現役です。年齢は意識していません。意識したら人生先が暗いからね(笑)。

いまだに15~16歳に感じる時もあるし、30代に感じる時もある。年輪の輪は増えているけど、普段は年齢のことは考えません。

ただ、還暦とか、米寿とか、喜寿とか、節目はありますよね。そんな時は、素直に年齢を感じて、祝ってもらいます。ある時は、年齢を無視して仕事に没頭する。私にとって、年齢に対するとらえ方は適材適所で変わります。

「何歳まで作品づくりをするの?」と聞かれるんですが、それこそ生ある限りですね。私には定年がないですから。普通だったら、「おれはもう年だから、子供に窯を譲ろう」となるかもしれない。年齢を一つの区切りとして。ただ、私は国から与えられた重要無形文化財という指定があります。「あなたは死ぬまで仕事をしてください」という指定を受けているわけですから、命ある限り精進を続けていかなければならないわけです。

人生精進が大切

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やっぱり精進が大切なんですよ。仕事の努力もそうですけど、自分の健康を維持するための精進もしないといけない。飲みたい酒も、食べたいものも、節制しなければならない。人間の体力には限度があるから、普段の私生活から精進しないといけないんです。

だから、私は月一回、健康診断を必ずやる。診断の結果で、お医者さんのアドバイスを受け、薬などで健康をコントロールする。自分のことは自分でコントロールしないと、他人はしてくれないですからね。

暑いときは涼しいところでビールを飲みたい。極寒の冬は温かいこたつに入りたい。そんな時でも、体力維持のためにウオーキングしています。日々の努力を怠ってはいけない。そういうコントロールという精進を日々して、1日でも1時間でも長生きしようとしているんです。

私も88歳になったから、今死んでも早死だったという年齢ではないけれども、まだあと10年でも仕事をしよう、旅に行こう、などと希望をたくさんもっていますからね。そういう希望を達成するためには日々の精進をしなければならないわけです。

若いときはがむしゃらでもいいけど、ある年齢がきたら、自分自身をコントロールしなければならないのです。私は、そういうコントロールをしながら仕事と自分の健康の保持をしているのです。

私は仕事をしなくても、親方だから誰も文句はいわないけど、決まった始業時間の8時に工房で椅子に座ります。今でも20代、30代の時と変わらない行動をしています。

88歳になった今でも、昼寝はしたことがないです。そもそも昼寝をする暇がない。休む暇がない。

私は死ぬまで、「月月火水木金金」です。ノーサタデー、ノーサンデーです。まるで、かつての帝国海軍ですね(笑)。

 

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