いい器は、口に当てた時の違和感がない
ケン坊:今回は、ぐい呑ですか?
花田:ぐい呑みたいです。
ケン坊:花田さん、これは?
花田:ご覧の通り、ぐい呑です。
ケン坊:それは分かっていますよ。有田焼きですか?
花田:有田焼きですよ。器って心を満たすよね。心を豊かにする。
中村:口あたりが変わるのか、気持ちの問題なのか。
花田:この前、一世を風靡したファッションメーカーの人と会ったんです。当時はポルシェとか乗り回していたんだけど、ある時、全部潰れて1店舗だけになって毎日毎日夜中までミシンで縫いようと。その時は軽トラで。軽トラとポルシェも見える景色はいっしょだと。でも、みんなから「そりゃ、違うやろ~」って言われて。それと一緒ですよ。違うはずですよ。
基本的には、素敵なもので飲むっていう、その気持ちの違いですよ。
安藤:喜多屋さんの大吟醸。しずく搾りです。
花田:この絵柄が繊細なんですよ。(日本酒を飲んで)言葉じゃない。そんな言葉は出てこん。
ケン坊:しゃべってくださいよ。テレビなんで。顔で表現して。
花田:マンダム。
みんな:ははっははっははっ。
安藤:景色は違いますか?
ケン坊:いい、全然違うね。いい器って、存在感がないっていうか。見た目は存在感あるんですけど、口に当てたときの違和感がないっていうか。
1つの作品ができあがるのに、3カ月から半年
中村:今日は、この器を作ってくださった方に来ていただいています。
村上玄輝陶房の兄・俊彦さん、弟・邦彦さんです。僕たち55歳なんですけど、年齢聞いていいですか。
俊彦:59歳です。
邦彦:56歳です。
花田:ちょうどいいくらいです。何か、すごいのがきましたよ。
俊彦:自分の柄は80種類くらい柄があるんですけど。
ケン坊:これすごいですね。細かい。これ、手書き?
中村:つくるのに、どれくらいかかるんですか。
俊彦:7回から8回、窯にいれるんですよ(焼くんですよ)。1つの作品ができあがるのに、3ヶ月から大きいものになると半年かかります。
中村:柄は、最初からデザインがあってしているんですか、やりながら考えられているんですか。
俊彦:絵付け、染付など一人で全部仕上げるんですよ。だから、色的なものは頭にでてくるんで、やりながら湧いてくる感じですね。
中村:最初に思っていたものと作品が違ったり、思ったよりもすごかったっていうのもあるんですか。
俊彦:そうですね。色が悪かったなと思うこともあります。
中村:7回から8回焼くのは普通なんですか。
俊彦:いえ。2回で。色つけて4回くらいが普通なんです。直で書くので、鉛筆で書いたりはしないです。
中村:一発勝負で。
邦彦:自分は幾何学模様専門で。父親が村上玄輝という陶芸家だったんです。先に兄が入って、その後3年後に自分が入って。兄が父の技法を受け継いで。
中村:お父さんの技法というのは。
邦彦:花鳥風景、人物だったんです。自分は、幾何学模様があったんで、面白そうだなと思って始めました。
中村:これを手でやるって大変ですよ。
邦彦:幾何学模様に正面がなかったので、正面を作ったんですよ。
ケン坊:工房では二人で?
俊彦:二人で並んで。
ケン坊:仲いいですね。
絵付けだけで10日間かかる。弟は幾何学模様専門で、兄は漆器を思わせるような作風
俊彦:私たちの作風は、上が小さくなって、一寸刻みで大きくしているんですよ。弟の幾何学模様は一寸狂いもなく描くんですが、私のは幾何学ではないので、一寸狂わないようにはできなくて目分量で。漆器を思わせるような作風にしたんですよ。
ケン坊:持つまでは、磁器だと思わないですもんね。7回、8回も焼くってことは、途中で割ることもあるんですよね。
俊彦:8回で割るとちょっとショックで立ち直れないですね。大きいのが、もうすぐできるっていうときに割れたときがあったんですよ。
邦彦:いっとき、立ち直れなかったですよ。
花田:たまには、失敗したっていう気持ちを晴らすために、このロカベリっぽく、おそらくカラオケでクールスかなんか歌ってらっしゃるでしょ。
ケン坊:ロックンローラなんですか。
俊彦:昔は、バンドも組んでいたし。楽器は、ベースとドラム。
ケン坊:弟さんは?
邦彦:フォークギター。
俊彦:一人は、プロにいったんですよ。僕がいったら売れていたかもしれませんよ。冗談ですよ。
中村:コピーで、どんなのやられていたんですか。
俊彦:若い頃は、文化祭でキャロルとか。外人だったら、ポリス。
ケン坊:弟さんは。
邦彦:かぐや姫。
ケン坊:全然違うけど、音楽という縛りでは趣味はいっしょなんですね。あと気になるのは、このお値段なんですけど。
中村:絵付けにはどのくらいお時間かかるんですか。
俊彦:絵付けだけで10日。
安藤:こちらは二人の合作だそうで。
俊彦:ここは私で、ここは弟で。
花田:醍醐味があるところをお兄さんで、地味なところは弟さんで。
俊彦:そんなことはないです。
中村:どっちがモテますか。
やっぱり、お兄さんがもてますか。
俊彦:この前、役場から依頼があってイギリスの女性の方がきて、鳳凰の絵を描いてくださいと。そこで、型紙に描いてあげたんですよ。
中村:その型紙を掘りしに持って行って、タトゥーを入れてもらったと。
花田:おいくつくらいの。
俊彦:29歳だったかな。
ケン坊:嬉しかったですか。
俊彦:はい。嬉しかったですね。
全く同じものはひとつとない。全て1点もの
ケン坊:気になるお値段ですが・・・50万円。なんか、お安く感じますね。
俊彦:いろいろ個展を百貨店でしているんですが、安すぎるから金額をあげておいてねと。
ケン坊:ちなみに、合作の方は。
邦彦:これは85万円です。
中村:そこは、何作くらい並べる個展なんですか。
俊彦:この前は200点。
中村:平均50万だとすると、1億ですよ。
邦彦:いえいえ。小さいものもあるので。
中村:まったく同じものはできないですよね。
邦彦:似たものはできますけど。
ケン坊:1点ものということですね。
邦彦:一つずつしか作ってないですからね。
ケン坊:貯金はだいぶあるんじゃないですか。
俊彦・邦彦:いえいえ、火の車ですよ。助けてください。