「ヨンキュープラス」49歳以上のおじさんおばさんに正直なメディアをつくってみました。ご賞味ください。

温泉の力。花田伸二より。

伝えたいこと コラム

温泉の力。花田伸二より。

初めての家族旅行は私が小学校3年生の時に父と母に連れられての天ヶ瀬温泉でした。温泉街を流れる玖珠川で今は亡き親父と鮎釣りをした記憶があります。

今の温泉情報に携わる仕事を始めてやっと落ちついた時、母が難病にかかり「治ったら温泉へ行こうね」って約束を交わしましたが、それは果たせずじまいでした。その分、一人暮らしになった親父と年に一度は温泉旅行へ出かけていました。特に思い出すのは指宿旅行です。町役場の運転手だった親父は車の運転が大好きでした。運転が自慢でもありましたので、友人からメルセデスベンツを借りて指宿温泉へ向かったのですが、往復ともに当時82歳だった親父が完走しました。とても運転が楽しそうでした。その旅行で初めて親父の背中を流したのを覚えています。「指宿ロイヤルホテル」の海が見える露天風呂で。

義理の両親を家内が黒川温泉の「のし湯」へ連れて行った時のことです。チェックイン時、フロントの女性が義母の杖を見て、何も言わずに、お風呂に一番近い部屋に、そっと変えてくれたことに義母はすごく喜んでいました。

縁あって出会った”ハナ”

10年前、突然うち(カフェ・ド・ボッコ)の常連さんが、ミニチュアダックスを拾ってきました。あまりの弱り果てた姿を見て飼うことを即決。以来、ペット連れの温泉旅館としては、とっても快適な阿蘇の「小笠原」へ何度も通いました。昨年その何歳なのかわからない “ハナ”も先立ちましたが、思い出はいやというほど、残っています。

今では、我々夫婦の唯一の親となった義父との温泉旅行は、足が弱いこともあり、客室に露天風呂がついた宿をチョイスしています。原鶴温泉の「六峰館」の露天風呂付き客室は「近いし、料理がおいしいし、スタッフさんが優しいし、雰囲気が落ち着くし・・」と、大のお気に入りです。

温泉は、人生の貴重な思い出の一場面の舞台となっています。

その今は亡き大切な人との思い出という記憶は、鮮明になることも、維持され続けることも、もちろん、新たに生み出されることもなく、少しずつ薄れてゆく儚いものですが、とってもとっても、貴重な“宝物”なのです。その舞台の一部が昨年に続き、またも被災されています。

私にとっての神様とは、両親と義母・ハナにほかなりません。「親は死してなお、子を育てる。・・・」という言葉がありますが、迷ったとき、重大な決断の時、助けてほしい時、仏壇の遺影へ問いかけています。55歳になってもこの有様です。

「熊本地震」より一年余り、まだ一部の道路は寸断されたままではありますが、全体的には将来への希望の光が見え、それに向かって前向き気持ちが芽生え、着実に復興の道を歩んでいます。

今回の「九州北部豪雨」は現時点ではまだ、被害すら明確になっていませんが、甚大なのは明らかです。そんな中、自らも無傷でないにも関わらず、翌日には被災者の皆様へいち早く、温泉を無料開放された原鶴温泉の旅館の皆様の心遣いと行動力には脱帽するばかりです。テレビの映像では、お風呂上がりの気持ちよさそうな笑顔が見受けられました。温泉の力によって、一時的にでも心身ともに幸福感を味わわれたことでしょう。いつの日か、この温泉入浴が良き思い出となることを切に願っています。この被災者の皆様は、今後、復興への急峻な上り坂を超えていく、強靭な心と体力と、卓越した術が必要とされていきます。

感謝の念を伝えるべきなのは承知の上ですが、仏壇に手を合わせ、行方不明者の無事やこれからの復興のお願いをする日々が続きそうです。私にとっての神様、どうかどうか、被災者の皆様に勇気と希望をお与えください。

最後に、亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。