毎年のことだけど、
バス停に向かう途中の大きなサクラが開花している。
4月を目の前に就職や入学が重なるこのタイミングに咲くサクラ。思い出とともに咲き乱れる。日本人は、年度の変わり目を、いつもサクラと過ごしてきた。
毎年のことだけど、自然とは容赦ない。
ワタシたちの仕事や家庭の状況など関係なしに、毎年、決まったかのように蕾を膨らませ、来年も咲くことを約束するかのように、潔く散る。
毎年のことだけど、
サクラが散るたびに子どもが大きくなる。
来年なんかひとつも約束されていないのに、このサクラの勢いに誤魔化されて長女の大学進学を受け入れる。次女の進級を祝う。潔い父としてやせ我慢である。
毎年のことだけど、
嫁さんのシワが深くなる。
褒めてあげる間もない。褒めてあげる言葉も持たない。夫婦ふたりの来年なんかひとつも約束されていないのに、毎年同じサクラを一緒に見上げる。
毎年のことだけど、
家族なんてそんなもんだとサクラが教えてくれる。
互いに褒めることもなく、
想うだけでクルクル巡るだけである。