杜氏たちが絶賛する焼酎「らんびき」って、いったいどんな焼酎?
1月17日の49プラスのゲストは、杜氏たちが愛する焼酎「らんびき」で知られるゑびす酒造の田中健太郎社長。いったいどんな話が繰り広げられたのか。
中村:今日は、ちょっとお酒のお話をしたいと思います。お酒はどうやって昔から造られてきたのか。お酒って福岡にもいろいろ蔵元があって。蔵は樽とか設備を持っているところのこと。そこに蔵元の最高製造責任者を季節ごとに雇い入れる。日本酒だったら、秋に新米が出るので仕込みをはじめるので、最高製造責任者を雇い入れる。この最高製造責任者が杜氏。当時は団体制になっていて、地域地域に流派があるので、そういう人達と蔵元さんは契約してお酒を造っています。
ケン防:杜氏さんの蔵ではないんですね?
中村:そうなんです。昔は組合とか団体があって、そこに登録されている専門の方。春は農家とかをしていて、冬は杜氏として働く。今は時代が変わり、蔵元さんがそのまま杜氏をするところが増えてきた。杜氏はお酒の最高責任者。その杜氏たちが愛する焼酎が朝倉にある「らんびき」。めっちゃうまいらしいです。だけど、あまり売れてない。それは、社長さんが口下手だかららしいです。
花田:実は、僕もその蔵に行ったことがあるんですが、そんなにいいコメントをもらえなかった。
中村:49プラスは、それをちゃんと応援してあげようと。今日は、朝倉市ゑびす酒造の田中健太郎社長をお招きしています。
ケン坊:田中健太郎っていうのですか?僕、田中健二です。
田中社長:親近感がわきますね。
中村:ゑびす酒造は、創業132年。田中社長で5代目。そもそも田中社長は杜氏ですか?
田中社長:はい。社長兼杜氏です。今こそ私が杜氏といっていますけれど、先代のころは鹿児島から黒瀬杜氏という杜氏集団の職人さんを、毎年造りの時に2名招いて、ずっと造りをしていただいた時期が長くあります。
ケン坊:実際に、自分が杜氏になっていかがですか?
田中社長:責任感もあるんですが、自分が杜氏をしたいという想いをそのまま作業に込めていけるので、嬉しいというか楽しいです。特に杜氏として、造った後の貯蔵や熟成に力を入れています。
花田:だから、こういう色が付くんですね。
「らんびき」15年ものは、まるでウイスキー。香りがすごい!旨さの秘密は樽にあり。
中村:何が違う?
田中社長:焼酎の製造は、当社の場合、3段階あります。原料を処理して発酵させる醸造。次は焼酎になる蒸留。最後に熟成。この熟成期間が一番長いのです。「らんびき」に関しては、樽を用いてまして。樽以外には、カネとかタンクとかで貯蔵します。これによって、味が変わります。樽も大中小、樽材の取れた場所は、北米、フランスなど地域が異なります。
ケン坊:早速、「らんびき」持ってきてくれましたか?
田中社長:これは、15年物。一番年数寝かせています。
ケン坊:わー。香りが。すごい!!
安藤:これ、焼酎ですか?
ケン坊:ウイスキーみたい。樽の味がしますね。
田中社長:やっぱり、樽からくる熟成感が一番大きな要素です。
中村:樽って毎回違う樽ではなくて古い樽?
田中社長:50年以上樽で貯蔵していますので、古い樽もありますし、種類もいろいろ。何回も使い込んで馴染んだ樽を、「らんびき」15年に使っています。
ケン坊:樽は、どんな感じなんですか?
田中社長:バーボンと同じような、アメリカンホワイトの樽を主に使っています。バーボンではないのですが、ラムを貯蔵した樽など、種類はいっぱいあります。
ケン坊:一度、ラムを漬けた樽?
田中社長:樽の履歴はいろいろです。
ケン坊:その樽で味が変わりますよね?
田中社長:かなり変わりますね。バーボンなんかは、樽を1回しか使わないといわれているんですが、そのため樽の中をハードに焦がしてしまうんです。そうすることで樽からくるオークラクトンの要素がグッと出やすくなって。色も付くし、甘みも出ます。
中村:この色は樽から出てくるんですね。
田中社長:樽から出るタンニンやリグニンといった色色素分がこういった色に。
ケン坊:右の樽は?
田中社長:こちらは、ブランデーを1回貯蔵した樽です。
ケン坊:樽は海外から持ってくるんですね。
田中社長:樽の業者さんが買い付けてきます。
ケン坊:へー。すごいですね。
中村:その樽の匂いを嗅いだら、どういう焼酎になるかわかったりするんだ。
田中社長:そうですね。経験があれば、この樽なら、こういう焼酎になると予想はつきます。100%はわかりません。
花田:わかるといったほうが、いいですよ!わかりますと。
ケン坊:「らんびき」の出来は、樽によるものなんですね。いい樽を仕入れられるかどうか。
田中社長:はい、樽はとても大事です。
田中社長は、飲むと暴れるって本当?
安藤:健太郎さん(田中社長)は、普段どれだけ飲まれるんですか?
田中社長:3合ぐらいがボーダーラインです。
ケン坊:飲むとどうなるんですか?
田中社長:リバースするものが無い状態。飲み始めると酒だけ。あまりよくないですね。
ケン坊:飲むとどうなります?
田中社長:かなり饒舌になります。
みんな:じゃあ、飲んで。飲まないと。
中村:カンペに飲むと暴れるらしいって。
田中社長:昔、ちょっとカウンターに乗ったり…。ですね。
「らんびき」って、響きが良くていい名前。名前の由来はアランビック。
中村:会社の名前をつけたり、ネーミングの仕事をしているんですが、「らんびき」ってすごい響き。らりるれろ、ばびぶべぼが入っていて、最後に「き」でしめる。すごい。いい言葉だし、音にしてもすごくキレイに入ってくる。
花田:この先生(中村)、すごい先生で。「JR博多シティ」を名付けたのもこの先生。水上公園の「SHIP’S GARDEN」(シップスガーデン)もこの人。
ケン坊:えー!すごい。僕、先生を胡散臭い目で見ていました。
中村:本当に、「らんびき」はステキな名前。一発で入ってくる。由来は?
田中社長:由来は、昔の蒸留器のことを、「らんびき」といっていました。江戸時代ぐらい。「らんびき」の語源になるものが、割と広域に入って来た蒸留器のアランビック(古代ギリシア生まれ)。アランビックからきています。
花田:名前も味もいいのに、売れないのは、社長の口下手のせい?
田中社長:貯蔵に時間がかかるので、量が造れません。量が造れないので、どんどん売るようなことをやってきませんでした。
ケン坊:この味なら、全国で売れてもおかしくない。麦焼酎は好き嫌いなく、みんな飲めちゃうから。
花田:ラベルもかわいいし、デザインもいい。僕も麦焼酎好き。お代わりいいですか?
樽の「らんびき」と甕の「古久」。中身は同じなのに貯蔵によって、なぜ味や香りが変わる?
田中社長:では、次は、樽貯蔵ではなく、甕貯蔵の「古久」を。8年ぐらい寝かせています。
中村:木の樽で味が変わるのはわかるけど、甕は味がどう変わるのか、よくわからない。
田中社長:もともと麦焼酎そのものの持っている旨み、香りの要素が熟成していって、少しずつ酸化したりと、香りが変わっていきます。樽に影響されないので、焼酎本来の熟成感みたいなものが、甕だと味わえます。
ケン坊:寝かせる時間は、寝かせればいいというわけではないんですね?
田中社長:そうですね。ものにも、寝かせ方にもよりますけど、古い樽なのか新しい樽なのか、いろんな条件で飲みごろ、熟成が変わります。
ケン坊:樽の開けごろは、いつ?
田中社長:歴史的には、50年とか60年なので、まだまだ日々研究しながら、一番いいところを見極めていっています。まだ、20年とか寝ているものもあります。
花田:甕仕込み、きました。色は先ほどと違って、透明です。
ケン坊:わー。全然違う!強い!樽はマイルドでしたが、甕は力強い。
田中社長:蒸留した時は、同じようなものなんですけどね。
花田:全然違う。甘い!
田中社長:「古久」は、ゑびす酒造だけの取り組みではなく、福岡県のメーカー8社が共同でやっている事業です。八女の黒木町にある廃線になった元国鉄のトンネルに30リットルの甕を貯蔵しています。
ケン坊:なんで、トンネルがいいんですか?
田中社長:トンネルは、年間を通じて15~16度。一定に温度が保たれているので、自然のワインセラーみたいなものです。
中村:カンペに「樫樽の焼酎に色を付けてそのまま売ることはできません」とあるんですが、これ、さっぱりわかりません。どういうこと?
田中社長:樽から出した焼酎は、もっとウイスキーとかウーロン茶みたいな色。ただ、焼酎とウイスキーの酒税の関係で、ウイスキーのように焼酎には色を付けてはいけないという規制があるんです。
中村:色が濃いものができてしまったら、どうするの?
田中社長:濃いのができたら、そこは各社いろんな取り組みで色を落とします。ゑびす酒造の場合は、7年貯蔵の場合、樽とタンクのものをブレンドして調整します。樽のままでは出せないのが、今の焼酎業界です。しかし、そのおかげで、焼酎本来の旨みとか樽の味わいとか、そういったバランスがとれた独自の樽貯蔵焼酎ということで確立しています。
中村:ブレンド技術も杜氏の仕事なんですか?
田中社長:焼酎業界には、ブレンダ―とかそういった歴史はないんですが、ブレンド技術は重要な要素です。先代と私とで、たくさんいろんな種類を飲んで技術を磨きました。テイスティングはとても楽しい。飲みたくなるのを我慢しながら、やっています。
花田:5、6年前に取材に行った時、おいしい焼酎だと思っていて。この番組で再会して。やっぱりいい焼酎だったんだと。杜氏たちの愛する焼酎って、僕も愛する焼酎でしたよ。
ケン坊:僕の愛する焼酎って。もうちょい寝かせましょう。花田さん、もう少し寝てて。