「ヨンキュープラス」49歳以上のおじさんおばさんに正直なメディアをつくってみました。ご賞味ください。

佐賀県・武雄温泉「京都屋」

ゆけむり紀行
戦国武将では織田信長が圧倒的な人気を博しているが、私は豊臣秀吉派である。というのも、織田信長のように「天下布武」という壮大な野望を抱いてそれにま い進するより、秀吉のように信長の背中を一心不乱に追いかけて、信長の死後、ふと周りを見たら天下を治められる地位になっていた、というコツコツ感が好き なのだ。農民の出自というのにも共感を覚える。その昔、文禄・慶長の役の際、名護屋城に集められた兵士が武雄温泉を訪れていた。そんな兵士に対し、秀吉は 他の入浴客に迷惑をかけないようにと、朱印状「入浴心得」を発行したという。秀吉ファンとしては誇らしい限りである。さて今回は、そんな歴史を持つ武雄温 泉街のランドマーク的存在の「京都屋」へ投宿した。  
トロトロした泉質の露天風呂
トロトロした泉質の露天風呂
  “大正ロマン”がテーマ 玄関ではこちらのテーマである“大正ロマン”を象徴する送迎用のクラシックカーが出迎えてくれる。意気揚々とのれんをくぐる。チェックインを済ませ、なじみのスペース「喫茶古都」へ。アンティークな家具や調度品が配されたその空間は懐古的であり、かつ、新鮮でもある。館内の至るところに価値の高いオルゴールや家具が点在しているのを見つけるのも楽しい。優雅な気持ちでコーヒーをいただいた後、客室へ案内される。堂々とした雰囲気を醸す、床の間を持つ純和風の空間だきらびやかな洋間より、ほっとするのは年齢のせいなのか。さて、いつものごとくすぐさま温泉へ。シンプルな石造りの大浴場でかけ湯をすませ、露天風呂へ急ぐ。浴槽の隅っこが好きな私は角を陣取る。柔らかいお湯が身を包む。ヌルヌルした肌触りを「ウナギになったようだ」と例えた友人もいた。果たして気持ちいいのか、悪いのか、微妙な表現ではあるが分からなくもない。嫌というほど、トロトロした温泉を肌に擦り込む。ここで大切なのは、体内から毒素が排出され、いい成分が体内に吸収されている、というイメージを膨らませて漬かることなのだ。ふ〜っ、健康になった。とっても健康になった。絶対になったのだ。  
送迎用のクラシックバス「大正号」と復刻版トヨタA型
送迎用のクラシックバス「大正号」と復刻版トヨタA型
 
「喫茶古都」を彩るアンティークコレクション
「喫茶古都」を彩るアンティークコレクション
  佐賀産黒毛和牛は絶品 部屋で一息つき、いまだ火照った体で夕食会場へ。木のぬくもりと洗練されたフォルムのイスが演出した明るくてモダンなダイニングルームだ。供される料理は和洋折衷の「ハイカラ膳」。その名のごとく、器使いや包丁技術も素晴らしく、味はもとより、見た目でも楽しませてくれる一品ばかり。特に佐賀産黒毛和牛のステーキは、絶妙な焼き加減と和風のソースがベストマッチ。締めの味噌汁は、日本人のありがたみを痛感させるに値する味付けだった。膨らんだおなかと満たされた心を抱えて夜も更けてゆく。 翌朝5時、早起きして、貸し切り状態のとろけるような温泉を再度、満喫した。太閤殿下曰く、「余は満足じゃ」。 <西スポ2015年6月17日(水)掲載「花田伸二のいい湯だな」より>  
和洋折衷の「ハイカラ膳」は味も見た目も楽しめる
和洋折衷の「ハイカラ膳」は味も見た目も楽しめる